魔術師が転生して桃太郎になったんだけど、俺が知ってる桃太郎じゃない……

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「んで、あんた名前は?」 とりあえず男の子用の服が無いらしく、目の前の女の子の服を着させられた。 身長は恭弥のが低い……、まぁ10歳前後だと女性の方が身長が高いあるある。 流石に下着は履けなかったので、ノーパンでズボンを履いている。 「俺か。俺の名は――■■■■」 ――御剣恭弥、と言ったつもりだった。 「なんだって?」 ようやく爺さんもbotから治ったらしく、普通に喋った。 良かった、bot爺じゃなかったんだね。 「君の名は――」 「だから■■■■」 ノイズが混ざる。 ーーあぁ、これ言質封印魔術が施されてやがる。 スパイなどがもし敵地で捕まってしまっても言質封印魔術を施しておくだけで、どんな拷問でも漏らさなくなるポピュラーな魔術。 ワードや、条件を付けて言葉を封印させる低級魔術。 今回は本名という条件があるらしい。 つまり、今世と前世の恭弥の名前は他人に漏らせない。 しかし、この魔術を打ち消すには魔術を施した術者しか消せないので現状、彼には手が付けられない。 言質封印魔術。 しりとりで自分に対して『1度使ったワード』、『んが語尾に付くワード』という魔術を施すだけで無敵のしりとりマシーンとして大暴れ、結果みんなに恐れられた元30歳。 「俺の名前は……、まだ無い」 「我がΦは猫であるか……、懐かしいのぅ……」 「爺さんやー、吾が輩じゃよ。猫である吾が輩じゃよ」 「お婆ちゃんボケてるー!猫は喋らないよー!あはははっー」 もう何から突っ込めば良いか、頭を悩ませる名前なしの男。 ーー我がΦってカッケーな! じゃなくて……、吾が輩は猫であるが通じるってここ日本なのか? あー、わかんね……。 「じゃあ名前付けてあげよー!桃から産まれた……」 「シュバババ」 「!?」 急に爺さんが目を光らせる。 「お主は桃から産まれた桃太郎じゃけぇ。のぅ、桃太郎や」 「急になんだよ!?てかダッセーよ、桃太郎なんて嫌だよ恥ずかしい!」 もっとカッコいい名前にしろよ。 ダース・ベイダーとかギルガメッシュとか悪魔将軍とかもっと俺にピッタリな名前があるだろ!?とか考える元、御剣恭弥。 「桃太郎!良いじゃなーい」 お婆さんがノリノリになってきた。 「なんか私、桃太郎は桃太郎って名前が最初から決められてたんじゃないかってくらい桃太郎は桃太郎って顔してる。なんか桃太郎ってオーラあるし、雰囲気も桃太郎って感じ」 「桃太郎ってなんだっけ……?」 なんか概念的になっている桃太郎。 そこで悟ってしまった。 ーーてかやっぱり……、俺桃太郎の世界に転生しちゃった……。 生まれ変わったという表現のが当たってるのかもしれないけど、でも俺は桃太郎の人生をなぞっている気がする。 思い出せ、俺! 桃太郎ってどんな話だっけぇぇぇ! 「というわけで自己紹介していこうか!私はツキ・ブレード!よろしく、桃太郎」 ……てかこんなキャラ居た? お爺さんとお婆さんって子供が居ない種無し爺さんとかそんな話じゃなかったかなぁ!? 「ワシがババ・ブレードじゃけぇ。ウチの嫁がジジ・ブレードじゃ。カカ、まぁ我が家だと思って暮らせよ桃太郎や」 「ホホ。よろしゅうなぁ。ウチがな、川で洗濯してたらな桃拾ってびっくりしたわー」 「は、はぁ……」 お爺さんがババで、お婆さんがジジってややこし過ぎる名前である。 「じゃあ桃太郎はウチらの名字のブレード名乗って桃太郎・ブレードやね!」 「桃太郎・ブレード……」 桃太郎ソード的な武器かなんかであろうか? もうなんでもよくなってきた……。 こうして、御剣恭弥という男は桃太郎・ブレードという名前で2度目の人生が始まったのであった。 魔術師が転生して桃太郎になったんだけど、俺が知ってる桃太郎じゃない……。 はじまりはじまり。
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