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生まれてきてくれた時は僕にそっくりで、君に似た方が美人だったのにと思った娘は、大きくなるにつれて君にそっくりに育ってくれた。
そこはかとなく僕の面影を宿してくれている部分は、髪の毛くらいかな。
癖っ毛で「お父さんと髪質そっくりで困る」と毎朝洗面台で格闘している姿は微笑ましい。
本当はいつまでだって見ていたい。
そうは言ってられないから毎朝後ろ髪を引かれながら出勤したんだけど。
娘が「お父さんに紹介したい人がいる」と言った時、目の前が真っ暗になった。
まさかこんな日が来るなんて、信じたくなかった。
きっと君のお父さんも、そんな気持ちだっただろうね。
だけど連れてきた彼が好青年だったから、ものすごく緊張してお茶の入ったグラスを倒したりしたから『ああ、悪い人じゃなくて良かった』と思った。
そして慌てておしぼりで真っ先に彼のズボンを拭く娘の姿を見た時『ああ、本当に、彼が好きなんだな』と思ったし、彼が娘に向ける情けない笑顔を見た時『ああ、本当に、娘が好きなんだな』と思った。
だってその目は、僕が君を見る目と一緒だったから。
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