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お腹…空いたァ…
武道場の時計…チラリと面金の隙間から見る。
……もうすぐ1時じゃん!
合同稽古10時半から11時半。
11時45分からすぐ試合…
審判は各校で交代制
女子は三人制で三分の試合時間
お昼引っかかるから、武道場の出た所にある
ロビーにお茶とたくさんのおむすび
香物、串に刺さった唐揚げなどの
軽いお昼が用意されてる。
試合終わった順に軽く腹に入れろと
言われて女子部員や先輩達行っている
あぁ羨ましい〜!
なんて言いながら…私は速攻をする
相手はさすがに高校生!追撃してくる
つばぜり合い…
「…お腹減ったよね?」
ウチのチームの相手。
M高Aチームの先鋒の人が聞いてくる
ちょいとうなづく私
この人も…時々武道場の入口
見ているから腹減り?
面金越しのその顔は眉下がりの
ちょっと情けない表情してる…
ウンウン、お腹減ると悲しい…
「…私もなの♪」
なんて笑顔…だけどね…
小5ながらに色々考える
腹減り?は本当かも知れない
だけどフェイクかも知れない
ほら小学生なんてちょろいぞ!
なんて観戦者から声あったし
すこしだけ冷静に考える
けど……お腹減った…。
「…だから…早く終わらそっ!ねっ♪」
つばぜり合い
面金越しに囁く人に
不意に押されて崩れる。
ヤベェ…!
左足の踵を床にぐいっ!とつけて
倒れぬ様にぐっと耐える
割られた正中線…その先に振り落とされる。
竹刀の所々藍に汚れた先革…が見える!
反射的に左足を斜め後ろに
大きく引いて右足引きつける
当然、体も左斜めに…
竹刀の先端は私の右肩にかかる
面布団に落とされる
ビイィーン!とした痛み…
「あ…あぶね~ッ」
誰かの声とほっとしたような声
「惜しいッ!惜しいッ!」
M高陣の声とが混じる会場
それらを聞きながら
さらに体を左斜め前にさばき
中段の構えを取り直す
私から見て…ガラ空きになってる
相手先鋒の右側…。
あぁ…お腹空いた!
そう思いながら…
急ぎ構えを取り直す先鋒の小手に
はッと気がついて小手を隠そうと
上がる手元…ガラ空きの…黒塗りの胴…
私は手首を返してそのまんま抜いた
「胴ありッ!」
上がるのは赤の旗
「オシっ!」
どう考えても父さんの声
松本先生の声
それから…K高の誰かしらの声
「あ〜あ…」
がっかりした声
色んな声が混じる
ピイィ…!!
ホイッスル
「時間です!」時計係の声
危ない危ない…
でもまずは中3Bチーム
先鋒戦一本!!
でも…お腹空いた…
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