プロローグ

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頭の中でこれからの物語を膨らませながら約20分ほど歩くと、 桜の木とともに学び舎が見えてくる。 この時期の校門前の桜はとても綺麗で、 僕たちを迎え入れるように花を咲かせていた。 「……ちょっと遅かったかな」 読んでいた文庫本を鞄にしまいながら校門をくぐると 昇降口の前にはすでに多くの人だかりができていた。 自分のクラスを知ったであろうその人ごみから いくつもの黄色い声や感嘆のため息が聞こえる。 掲示板に張り出されている名簿を覗くため 一生懸命背伸びをする学生の後ろ姿も見て取れる。 「はーい、自分のクラス確認したらさっさと校舎に入ってくれー!」 新学期から先生たちは大変そうだ… 自分も名簿を確認するために近づこうとすると… ふわりと…一瞬、微かに甘い香りが漂った。 黒色の長い髪をなびかせ、一人の女の子が後ろから抜き去っていった。 華やかな桜の香り舞う空気に、 微かに香ったその人は横眼で見ても端正な顔立ちをしていた。 「……」 思わず止まって盗み見した僕に彼女が一瞬目線を向けた。 しかし声をかけられるでもなく、そのまま前を向き名簿へと直行する。 雰囲気からなんとなく同じ学年だと思うけど…。 どこか愁いを帯びた表情をしていたように見えた。 「……僕も見るか…」 物語好きが祟ってなのか、 心や情景を『想像』するのが僕の癖だ。 こうやって他人を勝手に詮索してしまう。 悪い癖だ…。 それ以上考えるのをやめ、 華やぐ桜の空気に後ろ髪を引かれつつ 僕は昇降口へと歩みを進めた。
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