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ピロリロ♪ピロリロ♪
突然の電子音に我に返る。
傍らに置いたスマートフォンが画面を光らせていた。
思ったよりも深く集中してしまっていたようだった。
少し伸びをして画面を確認する。
『アキ、どこいるんだ?もう授業始まるぞ。』
ユキからのメッセージだった。
「えっ!?」
僕は慌てて時間を確認する。
次の授業開始まで30秒といったところだった。
「まずいまずい!」
僕は食べかけの料理をいくつか口にかきこみ蓋を閉じる。
こういう時に限って人はわたわたとしてしまうものだ。
残してしまって申し訳ないな…。
帰りに駅前の公園で座って食べよう。
大慌てで屋上の扉を開く。
重たい金属の扉は焦っているときに異常に煩わしい。
ドアをくぐりそのまま後ろも見ずに教室階への階段を駆け下りた。
……灰色の雲と少し湿った風がパラパラと紙をはためかせた。
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