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少し強引な感じになってしまっただろうか…。
おせっかいだと思われて嫌われたら…少し嫌だな…。
なんとなく今月さんの顔を見ることができず、
授業に集中しているふりをしていると…
パサッ…
自分の机の上に小さく折りたたまれた手紙のようなものが届いた。
驚いて隣を見ると集中して教科書に目を通す彼女。
先生にばれないような見事なブラフ…
読めということだろうか…?
「………」
綺麗に小さく折りたたまれたノートの切れ端を開く。
そこには可愛らしい字で
『教科書ありがとう。おかげで助かったよ!
数学は今度教えてあげるね! - 今月 -』
と書かれていた。
やばい…ものすごく嬉しい。素直にそう感じた。
今まで挨拶するだけの仲だったけれど、
これでほんの少しだけ今月さんと仲良くなれたかもしれない。
そんな浮かれた『想像』に思わず頬が緩みそうになる。
バレないように口元を隠し今月さんとは反対の方向を向く。
灰色の雲から垣間見える青空がなんだか輝いて見えた。
大事に自分のペンケースへ手紙をしまう。
こういうのってお返事を書いた方がよいのだろうか…?
僕はノートを破ってペンを取り、
『力になれてよかったよ。今度お願いします。 - 華落 -』
と書いて折りたたむ。
先生の目を盗んで今月さんの机の上にそっと乗せる。
そのまま前を向き聞いているふりをしていたが、
内心ではずっと右隣が気になって仕方なかった。
彼女も読んでもらう前はこんな気持ちだったのだろうか?
右隣から折りたたまれた紙を滑らす音が微かに聞こえる。
読んでる…。
辛抱できなくなり隣を見ると、
彼女もこちらを向けて微笑みながら指で丸を作った。
『OK!』
そういわれた気がして自分のテンションはかなり上がった。
いつにしてもらおうかーなんて考えていると…
授業終了のチャイムが鳴った。
もうそんなに時間がたってしまっていたのか…。
全く時間感覚がない…。
「じゃあ来週は64ページから解説していくぞ。」
そういって先生が出ていったのとほぼ同時、
今月さんはこちらに向き直った。
「改めてありがとう!すごく助かったよ。」
「う、うん。困ったときはお互い様だよ。」
「ん、優しいんだね。じゃあ、また今度、約束ね。」
そういって微笑むとひらりと立ち上がって教室を出ていく彼女。
その拍子に彼女を取り巻く甘い香りが
自分の周りの空気を心地よく包んだ。
これも積極的に小説を書こうとした恩恵なのだろうか?
星座占いも案外捨てたもんじゃないなと改めて思った。
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