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『人間が想像できることは、人間が必ず実現できる』
- ジュール・ガブリエル・ヴェルヌ -
これはある小説家の有名な言葉だ。本の虫である僕の座右の銘でもある。
といっても、別に僕自身は小説を書いたり何か作ったりする人ではない。
でも、創作者でなくてもこの言葉にはロマンがある。
自分は何も持たざる者だけど、劇的な何かがこの世界にはきっとあって…。
そしてその劇的な展開を謳歌できる人がいて…。
例えば…
弱小野球部が絆や努力で奇跡を起こし勝ち上がっていくような…
例えば…
病弱な少女が恋に落ちて、彼と2人で困難を超えていくような…
例えば…
新学期早々のこの曲がり角で美少女転校生とぶつかるような…
「…っと」
「…!」
右足に力を入れブレーキをかける。
通学中、本を片手にそんな風に物思いに耽っていると
危うく曲がり角で人とぶつかりそうになった。
「……」
「…すみません…」
会社へ向かう男性だろうか…?
曲がり角でぶつかりそうになり会釈し謝意を伝える。
男性は特にこちらに何も言うことなく忙しそうに歩いていく。
男性のぶっきらぼうな態度に少しやるせなくも感じたが、
ボーっと歩いていたので自分が悪いのだろう
と自らに言い聞かせる。
…現実はそんなに甘いものではない。
そもそも女性ですらないし、実際はぶつかる前にこんな風に回避するだろう。
だけどきっと…そんな耽った『想像』がどこかにあると信じて…
4月8日。
麗らかな陽気とやや涼しみを帯びた風が
残る寒さを惜しむように白桃色の花弁を舞い上げた。
「今年こそは…!」
物語の主人公のような、起伏ある劇的な生活を送りたい…。
雪のように舞うそれを見つめながら新学期に期待を膨らませた。
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