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「華……落…くん」
掠れるような…上擦ったような声。
「……は、はい。」
そこまでがっちり固まれると
こちらとしてもどう返したらいいかわからなかった。
しかしそんな表情と態度は一瞬で、問い詰める姿勢へとがらりと変わる。
「聞いてた?」
「う、うん…。」
「どこから?」
「えーっと…。」
「告白は?」
「き、聞いてました…。」
「華落君、ユリの知り合い?」
「いえ…知らない人です…。」
「あの先輩は?」
「し、知りません…。」
怒涛の勢いで畳みかけてきた。
その勢いに押されて反抗できず、次々と白状してしまった。
最後には怖くて思わず敬語に…。
「……はぁぁぁ」
大きくため息をつく今月さん。
すると、観念したという顔をして
「うまくやってきたんだけどなぁ…。」
その場にへたり込んでしまった…。
まぁ…正直今月さんの変わりようには驚いてしまったが…
「あ、あの…誰にでも裏表ってあるし…。」
「わかったようなこと言わないで。」
「ご、ごめん…。」
ぴしゃりと言い捨てられた。
普段の教室での今月さんとのギャップに面を食らう。
「今の私を見てどう思う?」
「え、えーっと…」
「どう思う?」
「その…いつも優しく微笑んでたのって
人間関係うまくやるためだったんだなぁ…って。」
「それだけ?」
「う、うん…。」
「…ふぅーん。」
自分の事なのに興味なさそうにそう返してくる彼女。
いや…彼女のその興味ないそぶりは
自分に対してというよりも僕の感想に対してだろうか…。
「だ、誰にだって…言えない秘密の1つや2つあるよ!」
「私は今バレちゃったけどね。」
「う…。あー…なんでそんなにうまく世を渡ろうとしてるのかな?」
「そこまで言わなきゃいけない理由あるかしら。」
「だ、だよね…。」
強かった風はなぜかやんでいて、静まり返った空間が2人を包む。
どうしたらいいんだろう…。これはあまりにも気まず過ぎる。
「……はぁ。」
「……。」
「…私、平凡で目立たず静かな学校生活が送りたいの。
誰からも疎まれず、羨まれず……無視されない程度の生活。」
「……?…う、うん。」
「だからこうやって適当に関係構築してたってこと…
誰にも言わないでくれる?」
さすがに適当に関係を構築してたとまでは読めなかったけど…。
今月さんに対して感じていた違和感の正体って…
自身の目立たない生活のために良い友達とクラスメイトを演じていた…。
そういうことで合っているのだろうか…?
なんかそれって…必死に隠すようなことなのだろうか?
仲良かったと思ってくれてる相手からしたらショックだろうけど…。
得体のしれない違和感はぬぐい切れていないような気がした。
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