25人が本棚に入れています
本棚に追加
「ところで兄さん昨日何してたの?」
「…え?」
朝の通学路で香織は僕に突然質問をしてきた。
今月さんの秘密を知った翌日。
昨日の夕暮れの重たい雲が嘘のようになくなり太陽が顔をのぞかせていた。
「…なんで?」
「シュークリームドロドロに溶かすくらい遅かったから。」
「……あぁ。」
焦ったぁ…屋上のやり取りを見られていたのかと思った。
努めて冷静にしないと…こんな事じゃすぐボロが出そうだ…
「ちょっと新しい本を買ってね…
それを集中して読んじゃってたんだよ。」
「ふーん…そんなに面白かったの?」
「うん、かなり入り込んじゃったよ。」
「…家でゆっくり読めばよかったのに。」
香織は少し不貞腐れながらそう口にした。
まぁ…正直悪いと思っている。
これ以上昨日の話をするとボロが出そうだし、
妹の怒りを再燃させかねないな…。
自然に話題を変える。
「香織は今日は部活か?」
「そー。幸也さんが部室の掃除したいんだって。だから手伝うの。」
香織はユキのことをいつも『幸也さん』と呼んでいる。
でも学校では『柊木先輩』らしい。
「メリハリは大事なんだよ!」って入学当初に言っていた。
「ほかの部員も一緒なのか?」
「んーん。全員参加じゃないよー。自由参加。」
「…ユキが発案者だから参加してるとこあるだろ?」
「べ、別にそんなんじゃないよ!…ちょっとはあるけど。」
少し照れ気味に顔を背ける。
それはもう答え言っているようなものなんじゃ…。
「だいたい兄さんは余計な気をまわしすぎ!昨日だって…」
「…っ。」
「ん?どしたの?」
昨日…と聞くだけで思い出してしまう。
冷静に考えたら、僕の秘密はあの場で渡したが
今月さんが速攻でばらさないとも言い切れない。
今日学校に行ったら大々的にポスターになっていてみんなが見てるとか…。
「あ、わかった!」
「…何がだよ。」
「昨日私が声かけた美人さん!」
「…えっ!」
嘘だろ香織、お前やっぱ見てたんじゃ…。
「ズバリあの人の事が気になるんでしょ!」
「……。」
「あれあれ~図星ぃ~?」
ウリウリとわき腹をつついてくる。
当たらずも遠からずな感じが絶妙に腹立つ。
いや…7割当たってるか…。
「水臭いなぁ!言ってくれれば協力するのにぃ!」
「絶対茶化したりふざけたりするだろ、お前。」
「しないよ~」
ニマニマと気味の悪い笑顔を浮かべる。
我が妹ながらほんとにウザイな。
「だいたいそんなんじゃないし…」
「うっそだー!あの時声上擦ってたもん!」
う…よく覚えてるなこいつ。
最初のコメントを投稿しよう!