2座目 創立祭委員と数学

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「…ま、まぁ、今月さんは確かに可愛いとは思うよ。」 「へぇ…今月さんっていうんだ。」 そういって楽しそうにクスクスと笑う。 こいつっ…。 「…余計な事したらユキに全部言うからな。」 「わーわー!それはダメ!!」 「まったく…」 香織とのこの距離感は好きだ。 世間的には仲良く見えるみたいで、 ユキからもたびたびシスコンとからかわれる。 駅前を通り過ぎ、付近には通学する人たちが徐々に増えていく。 「…なぁ、香織。」 「んー?なーにー?」 スマホに目を向けながらこちらを見ずに応えてくる。 「…女の子にとって友達ってなんだ?」 「…はぁ?」 「いや…ごめん…なんかわけわかんない質問だったな。」 突然何を聞いているんだ僕は…。 昨日の夜、帰った後に今月さんの秘密について考えていた。 友達との距離感…告白による関係悪化…。 そういった部分を気にしている彼女は、 『友達』という距離感を演じて作り上げている。 その理由は何だろう…と考えていた。 余計な詮索。僕の悪い癖。だけど気になってしまって…。 昨晩はあまり寝ることができなかった。 なぜ気になってしまうのか自分でもわからないが… 自分でよければ力になってあげたかった。 「…女の子も男の子も友達なんて変わんなくない?」 「いや…そうなんだけどさ…。」 「んー、何が聞きたいのかわかんないなー。」 小首をかしげる香織。短い髪がさらっと揺れる。 「あ。でも男の子に比べてめんどくさいって聞くよね!」 「あー…それはよく聞くな。実際はどうなんだ?」 「私はそう感じたことないよ。ただ…」 「ただ…?」 「輪からはみ出し過ぎてる子は大変そうだなと思う。」 「どういうこと?」 「んー…出る杭は打たれる的な?」 出る杭は打たれる…か…。 昨日のことを思い出す…。 『…私、平凡で目立たず静かな学校生活が送りたいの。  誰からも疎まれず、羨まれず……無視されない程度の生活。』 目立たず自然な、そういう関係を望んでる。 なにも矛盾はしていない。だけどなんだかモヤモヤする。 「あとは…取り繕い過ぎてる子も大変だと思うよ?」 「…え?」 「だって友達って一緒にいたいからいるんでしょ?  窮屈じゃない?私だったら破裂しちゃいそう。」 「……。」 そうか…たしかに…窮屈か…。 彼女の違和感を表現するのに 今まで考えた中では最もしっくりくる言葉だった。 「…で、なんでそんな質問急にしてきたの?」 「え、あぁ…えーっと…」 良い言い訳が思いつかずに言い淀んでしまう。 すると… 「おはよう。華落君。」 凛とした澄んだ声が後ろから聞こえた。
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