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その日の帰りのホームルーム。
「はい、じゃあいったん席ついてー。」
担任の百崎先生が教壇にあがる。
女性の教師で年齢はかなり若い。
話しやすさからか男女問わず人気がある。
少し抜けているところはあるが穏やかで良い先生だ。
ちなみに独身らしい。
「えっと、創立祭実行委員からお話があるそうですー。
じゃあ、二星さんあとはお願いね」
「はい!」
そう呼ばれた女の子は自席から立ち上がり教壇へ向かう。
僕たちが通う学校には『創立祭』というイベントがある。
創立記念日に合わせたイベントで、俗にいう文化祭のことだ。
時期が9月半ばに行われるため夏休みの期間も動くことになるらしい。
「えーっと…
今回は皆さんにひとつだけお願いがあってお時間いただきました!」
教壇に立って礼儀正しく進行する二星 希美さん。
茶色がかって少しウェーブの入った長めの髪が特徴的だった。
「今年度のC組の実行委員は私なんですけど…
ちょっと委員会自体の作業が忙しくて
できればどなたかに手伝っていただきたいな
と思っているのですが…。」
「はい!どんな事やるんですか?」
ユキが元気よく手を挙げて質問する。
「えーっと、主にクラス内の出し物のまとめとかですね。
委員会に申請する類のものは基本的に私が担当するので、
出し物や人数調整など簡単な仕事になるかと思います。
補佐的な仕事と考えてもらって構いません。」
二星さんは少し派手な見た目をしている。
しかしこういうところはしっかりしているんだなと
全く場違いな感想を持った。
「放課後の集まりに参加したりなどはありますかー?」
「今のところはないですが、
『創祭』が近づいてくると残る事があるかもしれません。
部活動があると少し厳しいかもしれませんね…。」
そう言うと、皆思い思いに話を始めてしまう。
やはり放課後残る事に抵抗があるみたいだ。
「え、えーっと…どなたか手伝ってくれる方は…」
二星さんもそんな雰囲気を察してしまった。
こういう状態になってしまうと収拾がつかない。
押し付けふざけあう男子生徒や不自然に目を逸らす生徒たちの
相手はつらいものがあるだろう。
「ほーら、静かにしなさい!」
「あ、あはは…。」
百崎先生が軽く叱咤する。
そんな状況に二星さんは苦笑いをするしかない。
ガヤガヤとした喧騒はあっという間に教室を飲み込んだが、
困惑する二星さんの周りの時間だけが止まっているように見えた。
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