2座目 創立祭委員と数学

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「……ふぅ。」 張りつめていた緊張の糸が切れる。 それと同時に口から吐息が漏れ出した。 寿命が数分縮まったかもしれないな…。 「……華落君。」 「あっ…。」 放課後の喧騒の中、 『微笑み』を浮かべた今月さんが声をかけてきた。 その微笑みは今までで一番揺らいでいた。 なんて声を掛けたらいいかわからない。 そんな顔をしていた。 まごついた空気が僕たちの間を流れる。 「…えっと…どうして…。  いや…えっと違くて、その…あ、あり」 「華落くん!」 「…っ!」 今月さんが言おうとした言葉は、 突然僕を呼ぶ明るい声に遮られた。 二星さんがこちらに駆け寄ってくる。 「いやぁ!たすかったよ!本当にありがとー!」 「あ、うん。どういたしまして。  僕も委員会でいない時があると思うけど忙しいわけじゃないから。」 「いやいや!それでもマジ感謝です!」 僕は努めて冷静に返した。 ぶんぶんと僕の手を取り上下に振る二星さん。 この人は…花のように笑う人だな。 あっという間に空気が引き込まれるような…そんな笑顔だった。 「でもなんか今月さんごめんねー。  ああやって推薦されるのって  なかなかいい気分じゃないでしょ?」 「…んんっ。いや、そんなことないよ!  私も力になりたいと思うから何かあったら声かけてね!」 「ほんとにー?助かるよー!」 軽い咳ばらいを交えて返す今月さん。 その表情はいつもの微笑みを取り戻していた。 「じゃあ、華落君。また後で。」 そう言って僕ら2人を置いて教室から出ていった。 さっきは何を言いかけてたんだろうか…? 図書室に来たら聞いてみよう。 「んー、華落くん。秋人くん。うん、秋人くん!」 「え?」 「あぁ、いや!  華落くんって呼ぶの他人行儀かなーって思って!  これからよろしくね!秋人くん!」 「なるほどね。別に何でもいいよ。好きに呼んでくれて。  うん、よろしくね。えーっと…」 「希美でいいよ!」 「うん。希美さん。」 そう言ってぱっと離れると… 「うん!  とりあえず打ち合わせとかするから  また今度声かけるね!またね!」 「またね。」 彼女は小踊りしながら手を振って教室を出ていった。 とても明るく陽気な人だった。
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