プロローグ

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---------------------------------- 2-C 華落秋人(ハナオチ アキト) ---------------------------------- 掲示板を見ること十数秒、自分の名前が目に入ってきた。 C組か…階段から近いし図書室へのアクセスも悪くない。 クラスの確認ができたので校舎に入ろうとすると肩に小さな衝撃が。 「…アキ!おはよっ!」 「っと…あぁ、ユキか、おはよう」 「あ、びっくりしたか。悪い悪い!」 幼いころから友人の柊木幸也(ヒイラギ ユキヤ)が 屈託のない笑顔でおどけたように謝って肩をポンポンと叩き直す。 「ユキはクラスどこなの?」 「C組、アキは?」 「あぁ、僕もCだよ。」 「なーんだ、一緒じゃん!ここまでくると飽き飽きするな!」 「だなぁ、昨年も同じだったしね。」 言葉ではそう言っているが、笑顔が引っ込むことはない。 それは僕自身も同じだった。 新学期に期待はあるが『独り』はやはり心細い。 それに、気さくな彼には昔から助けられることも多い。 友人が多くはない自分にとって、この仲というのはとても心地よい。 大切な友人である。 「今年も図書委員か?」 「まぁ、そのつもりかな…」 「変わらないな。新学期だし何か別の事に挑戦とかしないのか?」 「別の事って例えば?」 「んー…部活とか?あっ、演劇部ならいつでも門開けてるぞ」 胸に手を当て、まるで喜劇役者のように勧誘してくる友人。 性格の明るさも相まってなかなかに様になっている。 「前に出る性格じゃないの知ってるでしょ?」 「物語からインスピレーションがもらえる…『本の虫』だし!」 「またそうやって馬鹿にして…」 「ははっ…まぁうーん、舞台上がるの嫌なら脚本とかどうよ?  俺は見てみたいぞ、アキの脚本。」 「幼稚園生のお遊戯会みたいになるけど?」 ユキは両手を上げ、まるで「お手上げ」とジェスチャーを取る。 「好きなんだから書いてみりゃいいのに。脚本じゃなくても小説とかさ」 「…んー、まぁ興味が出たら書いてみるよ」 柄にもなく友人相手にすかしているが、 新学期という空気にワクワクしているのは事実だった。 そんな話していると、いつの間にかこれから世話になる教室のドアの前。 「……」 何か…自分に劇的な展開が訪れるだろうか? そんな淡い期待を抱いて… 教室の木床を踏みしめ、ドアをくぐった。
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