1座目 星座占いと告白

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『今週最も運勢がいいのはしし座の貴方!』 テレビから流れる陽気な声を聴きながら僕は朝食を食べていた。 「やったね。1位だ。」 星座占いを普段から信じているわけじゃないけれど、 朝から1位ですよ!と言われると悪い気はしない。 「秋人、手を止めないで早く食べちゃいなさい。」 母に咎められるがなんとなく見入ってしまう。 『今週の貴方は最高の1週間になるでしょう!  自分から積極的に行動するといいことが次々舞い込んでくるかも?』 …1位なのに自分から行動しなきゃいけないのか。 なんか微妙じゃないかな…? そんなことを考えているとドタドタと家が騒がしくなった。 「やばいやばいやばいやばい!」 バタンという大きな音とともに、リビングの扉が勢いよく開く。 「あら香織(カオリ)、遅いわよ。」 「おはよう、お母さん!ちょっと兄さん!なんで起こしてくれなかったの!」 「なんで僕がお前のことを起こさなきゃならないんだ。」 そういってジタバタと髪を整えながら僕に文句を垂れてくる1つ下の妹。 香織は朝食のパンを頬張りながら畳みかけてくる。 「ふぉきてるんふぁらふぉこふぃてくれてもふぃいふぁん!」 「…なんて?」 「…んぐっ…起きてるんなら起こしてくれてもいいじゃん!」 「いや、急いでるのなんて知らないよ…。」 「私今日日直なの!」 「もっと知らないよ…。」 香織は今年の春から僕と同じ高校に通っている。 「あー、もう急がないと…!兄さん絶対許さないからね!」 「なんでだ。」 「罰として学校帰りシュークリーム買ってきて!駅前の!わかった?」 「いや、なんでだ!」 本当に焦っているからなのか食べるのが以上に早い。 もう朝食はほとんどなくなっていた。 「それより僕、今週の星座占い1位なんだ。」 「だから何!?私は兄さんのせいで運気最低だよ!」 なぜなんだ…。 あと1位にもうちょっと食いついてもらってもいいじゃないか。 残りの朝食を口に放り込み慌てて立ち上がる香織。 「シュークリーム2個ね!兄さん!チョコクリームと抹茶クリーム!  じゃあお母さん、いってきまーす!」 「はい、いってらっしゃい、気を付けるのよ。」 「いや待て!買わないからな!」 実妹の後ろ姿に心の内を叫びかけた。 まるで嵐のように去っていき、兄の悲痛な叫びに対する返事はなかった。 「…母さん、今週俺1位なんだけど…」 「だから何?  あ、香織お弁当忘れていったみたいだから学校で渡してあげて。」 僕の占い結果を無慈悲に一蹴して2つのお弁当を渡される。 別に信じているわけじゃないけどさ…。 いいことあるかもしれないわけだしさ…。 羨んでくれてもいいじゃん…。 齧り付いた朝食のパンはなんだか味気がなかった。
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