1座目 星座占いと告白

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5月。 輝いて見えていた新学期から1ヶ月が経っていた。 僕の中にあった淡い期待はすっかり褪せてしまい いつも通りの平凡な日常を送っていた。 片道20分ちょっとの通学路を文庫本片手に通学する。 いつも通り学校で学んで、本を読んで、ユキと帰ったり遊んだり…。 気づけばそんな生活がひと月、劇的な展開はいまだ訪れず。 そんな中で過ごしているからか、 ひと月前の期待など頭の片隅に微かに残るだけになってしまっていた。 本に集中していると登校はあっという間だ。 教室に入り、2つ分の弁当を机脇にかけながらなんとなく空を見てみると 青空の中に灰色の雲がバラバラと散らばっていた。 「一雨降りそうだなぁ…」 肌にまとわりつくような暑さが少しづつ顔を出し始めている今の時期。 雨はあまりうれしいものではない。 今日は傘を持ってきていないし、降らないといいけれど…。 「あー…ジトっとする…アキ、おはよう」 「そうだね…ユキ、おはよう」 天候の心配をしていると、気怠そうにユキが登校してきた。 「こう、ジト―っとしてるとしまっている衣装とか資材とか  確認しないといけなくなるかなぁ…」 「あぁ…演劇部はこの時期大変そうだね…」 「うん…面倒だ…」 ユキは愁いた視線を窓の外に向ける。 男の自分が友人にこう思うのは何だが… その姿は多少絵になる綺麗さがあった。 ユキは決して誰もが羨む美貌を持っているわけではないが、 背の高さは180ほどあって、性格は明るく気さくで、 演劇部に所属していて演技力もピカイチ。 平たく言うと…女の子にモテる。 でも誰かと付き合ってるとかそういう話は聞かない。 羨ましい。絶対に許さない。 そもそもこんなにも存在そのものが劇的な人間が近くにいるのに 何で自分はその恩恵を受けられないのだろうか…? 「ん?どうかした?」 「…いや。」 僕の嫉妬を知ってか知らずかこちらに向き直ってきた。滅んでしまえ。 「そういえば、この梅雨の時期だと本の管理とかはどうなんだ?」 「あぁ…大変な部分もあるかな…。  積まれた紙が湿気で『波打ち』してシワの原因になったりするからね。  外気を避けた屋内で管理してれば平気なんだけど…。  屋外に出して宣伝してる本屋とか大変そうだなって思ってるよ。」 「はぇー…予想はしてたけどやっぱ大変なんだな。」 「逆に演劇の衣装とかはカビちゃいそうだよね。」 「あぁ…そうなんだよ…去年なんかはさ…」 そんな雑談で関心し合っていると、 一人の少女とともにふわりと甘い香りが教室へと流れてきた…。
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