7人が本棚に入れています
本棚に追加
「おめでとう、と」
グループLINEには友達から次々と祝福のメッセージが届き、愛からはダイヤのついた指輪の写真が送られてきた。
「結婚か」
私は携帯を握りしめたまま目を閉じた。
結婚どころか彼氏がいたのは大学生の時が最期だ。恋愛をしないと決めてからもう十年が経つのだ。
その時携帯が鳴り、表示を見れば母親だ。
「もしもし?うん、元気にやってるよ。そうなんだ、おめでたいね。あー私は今は仕事が楽しいから。あ、そっか。もうそんな時期か。忙しくてちょっと帰れるかは分からないよ、ごめん。分かってるから、じゃあね」
通話を切ると、ため息をついた。
またこの季節が来たんだ。私が一番嫌いな季節。何人の花嫁さんを送り出しても私の罪が消えることはない。式の最中は幸せだ。やり甲斐のある仕事だとも思う。
でも家に帰れば私は自問自答する。私なんかがこの仕事をしていていいのだろうか?ありがとうなんて言われるような人間じゃないのに。
恋愛をしないと決めたのも、この仕事に就こうと決めたのも、理由は同じだ。償い。一生消えることのない罪を背負って、私は明日も笑顔を貼り付け生きていく。心から笑った事なんてあの日以来無いというのに。
最初のコメントを投稿しよう!