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「上野さん?」
「あ、ごめんなさい。それで式は家族だけで?」
「はい。私があがり症で、人前にとても立てないので」
「家族だけの式も最近では増えてますよ。呼ばれるのはご両家のご家族でいいですか?」
「はい。あの父に何かサプライズをしたくて」
「お父さんに?」
「はい。男手一つで私を育ててくれたので。こういう機会でもないと感謝とか伝えられないと思って。やっぱり親にとって子供の幸せが一番嬉しいんですよね」
「…………そうですね」
私の両親も果たしてそうだろうか?私の幸せを願ってくれているだろうか?家に帰らなくなって十年が経つ。もう顔もうっすらとしか思い出せない。
「私……ずっと両親に会ってないな」
ついぼそっと本音が漏れた。
「えーダメですよ。いつ何があるかなんて本当に分からないんですから。あの時会っておけば良かったなんて思っても遅いんですよ?」
分かってる。私達はこの毎日がずっと続くと心のどこかで思っているけど、そうじゃないことくらい。痛いくらい分かってるんだ。
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