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「迎えに来たのよ」
「わざわざいいのに……。よく分かったね」
「そりゃ分かるわよ。自分の子供だもの」
「…………。」
「お姉ちゃんも喜ぶわよー。十年ぶりに桜が会いに来たんだから。あの子桜のこと大好きだから」
大好きだから。
「大好きだったの間違いじゃない?」
「桜?」
「今はもう嫌いになったよ、絶対。今日はお母さんとお父さんに会いに来たんだよ。誰もお姉ちゃんに会うなんて言ってない」
母親は小さく微笑んだ。
「お姉ちゃんに会う気があるから、だから花束買ってきたんでしょ?実はね、そんなことで怒るような子じゃないよ。母親の私が一番よく分かってる」
「…………。」
それから二人は黙ったまま道を歩いた。流れていく風景に足が鉛のように重たくなっていく。
行きたくない。会いたくない。会ってなんて言えばいいの?あの時も私は何も言えなかったのに。
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