32人が本棚に入れています
本棚に追加
視認しづらい黒のパーカーを着たジャージャーがバナムの前に立っていた。
「何だよ、入ればいいのに」
「いや、入りづらい店だなって」
薄気味悪い緑の電灯に照らされた店内を指差す。その先にちょうどミートした店長が、舌にぶら下げたピアスを爬虫類の笑みでこちらに見せびらかす。
店の奥にはよく見る女がいた。ヒールの高いエナメルのブーツを履いた脚。下半身の形がわかるスカート、胸の先端を示すシャツ。
「いらっしゃい。ジンでいい?」
店長はいつもどおり水煙草を咥えて大量の煙を吐き散らかした。
「ちょっとライム混ぜて。あとこいつ、ジャージャー」
「へえ。ヨーダにジャージャーか。スターウォーズごっこでもしてんの?」
「まあそんなとこ。一応人間界の名前は慎太郎ね」
ジャージャービンクスのように図体もパーツもでかい。愛嬌のある顔には馬鹿正直に見えるでかい口が付いてる。だからジャージャー。
「お前は?何飲むの」
「なあヨーダ、俺初めて見た、あれ水煙草だよな。あんなでかい吸引機で吸うんだな」
世間知らずを無視して、店長は別のグラスにもジンを注いだ。
最初のコメントを投稿しよう!