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「お前もう今日電車終わってるよな」
「そう。逃したんだよね」
「シラフだろ?」
飲みもせずに終電を逃せる方法が気になる。スタバでつけまつげでも付けて遊んでたか。
「シラフで女の子とキスしてたら終電逃してさ」
喉を通過しかけた酒が口から吹いて出た。ジンを煽りながらジャージャーが急いで寄越したナプキンが酒を吸い取っていく。なんて勿体無い。
「お前からそんな話聞くとはな。もちろんそのままその辺のホテルで昇天した?」
「まさか。久々に海外から帰ってくる女の子をバス停で待ち伏せて、勢いで告白して、キスしてただけだよ」
「どんなマンガだよ」
ジャージャーの根明な声は、店内にかかる曲とてんで合わない。ここはもっと血だらけになるまで噛みちぎられたような話をする店なんだが。
「お前のキスってどんなキスなの」
「何その質問、別に大したもんじゃないよ」
「だってお前の舌、伸縮自在なんだろ」
「それ本物のジャージャービンクスな。俺のは普通だよ。色もピンク、ほら」
「キスしたばっかの舌見せんなよ。酒で洗っとけ」
「ヨーダってさ、実家が寺だとは思えないぐらい低俗だよな」
そうだ、俺は寝仏のように有難く横たわりながら、床にこぼれた酒を舐めて下衆な暮らしを謳歌している。
「でも確かに、軽く昇天したかも。自分で言ってて気持ち悪いけど、ここ1年ぐらいたまに連絡しながら、心のどっかでずっとキスしたいって思ってた。だから出迎えた先で彼女から寄り掛かってきたのは意外だったな。それがなんとも言えない抱き心地とか匂いで愛おしくて。ものすごい速さで今までの感情がまとまっていったし、キスした瞬間は垂直に飛んでったよね。なんか色々びっくり」
「お前、よくそんなファンタジーな話流れるように言えるな。話す相手間違えてるから」
「久し振りに会った友だちにそんな突き放されると辛い」
「元々お前とはSF好きぐらいしか共通点ないんだよ」
「スペースファンタジーだから、別に話のジャンルとしては間違ってないでしょうよ」
「ちげぇよ、SFはサイエンスフィクションの略だよ、バーカ」
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