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 元々小物などは好きではない。部屋に来た友人相手に女子力でマウントを取ったり、ピュアな恋人の幻想を叶えてやったりというのは分からなくもないが、それでもきっと多くは訪れないであろうそんな機会のために、毎日の掃除の手間を増やすのは採算が合わないように思える。  そうでなくとも一年前、彼の部屋から持ち出すために纏めた私の荷物は、自分一人で持ち運べる程度の量だった。それを見た時私は、改めて自分が没個性的な人間である事を思い知らされたのだった。  ベッドとテーブルが置かれたフローリングの部屋を抜けてキッチンへ向かうと、カシャカシャという音も一緒に着いてくる。シンクの横に置かれた二十センチ程の長方形の物体、自動餌やり器の蓋を開けて中身を確認すると「全く」と息を漏らした。 「どうしてお前はここから食べようとしないかなぁ」  口にしてみるが、相手はきょとんとした顔をして、その真っ黒な目で私を見上げてくるだけだ。 「あざとい奴め」  シンクの収納からドッグフードの袋を取り出し、中身を皿へ移した。鼻先へ置いてやるとカプカプと猛烈な勢いでそれを食べ始める。  ものを食べている時は手を出さない方がいいという話をどこかで聞いた気がするが、出会った頃からこの子はそれを気にする素振りも見せなかった。頭を撫でてみても、バタバタと動く尻尾を捕まえてみても、プラスチックの皿から顔を離そうとはしない。
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