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 ベッドの上で自分の体が溶けて広がっていくような気がする。部屋の電気はつけていない。キッチンから漏れてくる明かりが、視界の先にある小さなテーブルの影を作っている。  この疲労は、何のための疲労なのだろうか。最近、毎日こんな事を考える。今日という一日は何のためにあったのだろうか。私という人間にとってどんな意味があったのだろうか。  その答えが見つからない事は分かっていた。昨日も同じ事を考えたから。今日も昨日と変わらない一日を過ごしたから。そして昨日だって……。  そうして停滞した日々と一緒に、世界が止まっていてくれるのなら、どれだけ救われるだろうか。もしそうだとするのなら、私のこの虚しい焦りや悲しみが、私の今を監視し続ける事もなくなるというのに。  ブウウゥ、ブウウゥと、床に投げ捨てられたバッグの中から、スマホのバイブ音が聞こえていた。私は身動き一つとらないまま、その音が消えるまでテーブルの伸びた影を眺め続けた。
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