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この日は朝から頭痛が酷かった。目の奥から引っ張られるように後頭部へと伸びる不愉快な痛み。薬の効果はまだ現れていない。足元から伝わる電車の振動に呼応するようにズキズキと痛む。
斜め前に立っている男の人の整髪料の匂いで吐きそうだった。後ろの人の大きなリュックサックが何度も背中を押してくるせいで、踏ん張っていなければならなかった。
目的の駅へ到着し、吐き出されるようにして他の乗客と共に電車を降りる。改札を潜り、会社へ向かっていく。
空には不安になるくらいの分厚い雲がかかっていた。頭痛の原因はこれかもしれないなと思った後、私の心は世界を離れた。
午前中はデータ入力や電話受付といった業務をこなし、昼休み、いつものように美代子と社内の食堂へやって来る。長机がずらりとならんだ白い食堂。窓際の後ろから三番目が私達の指定席。誰と話し合ったわけでもないのに、言葉も交わした事もない他の部署の人達との間にもルールが作られる。人間のこういう一面を見えると、何故だか私は少しだけ安心する。
「今日の佐々木さん、香水キツくなかった?」
腰を下ろすや否や、美代子が美代子らしい事を言ってきた。地味な顔に濃いメイク。口を開けば陰口が飛び出すのがこの女だ。
「そう? いつもじゃん」
「いや、いつも以上だったんだって」
美代子の弁当は今日も手作り。よくやるなと思いながら、私は今朝コンビニで買ったサンドイッチの封を開ける。
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