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翌朝、けたたましいアラーム音で目が覚めた。カーテンの隙間からは、爽やかな朝の日射しが燦々と降り注いでいる。
妙な夢だった……でも不思議と熟睡できた満足感がある。
ただの夢だったのかな、それとも私は本当に、この世とあの世の境い目に行っていたんだろうか。
まあ、いずれにせよ、私は格安アパートに「実際に」当選した訳ではない。これからも、「現実の」このアパートの家賃を払い続けなければならない、あと水光熱費も。
きのうはカッとなって退職届を叩き付けてしまったが、仕方ない、自分にだって非はあるのだ、非をきちんと認めて誠心誠意謝罪して、どうにか取り消してもらおう。なんだかんだ言って、今の職場、好きだし。
カッとなる事もある。落ち込む事だってある。だって、生きてるんだから。
沈んだって大丈夫。「活きがいい」って、天使ジジィからお墨付きもらったし。
さ、今日も頑張ろう!
と、その時、部屋のドアががちゃりと開いた。
「おはよう、瑠璃子さん!」
現れたのは、ヒマワリのような笑顔の──
「さっ、櫻子さん!?」
夢っ、夢じゃなかったの!?
「ひとつ、言い忘れちゃって。あのアパートの名前、舞騎魅荘だから」
「ぶっ……ぶきみ!?」
「天使ジジィがつけたのよ。なんかさ、夜露死苦って感じ?」
固まった私をよそに、櫻子さんは楽しそうにキャハハと笑った。
「じゃ、また夜にね! 待ってるからね、瑠璃子さん!」
水色のスカートがふわりと揺らいで、気が付くと櫻子さんの姿は消えていた。
夢じゃ……なかったんだ……。
ど、どうする?
……いや、どうするもこうするもないか。
やるしかない。こうなりゃとことんやってやる!
[おわり]
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