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* * *
殺してやりたいと思うほど、憎んでいた。
殺してやりたいと思うほど、恨んでいた。
殺してやりたいと思うほど、妬んでいた。
殺してやりたいと思うほど、羨んでいた。
裏切られて、心も身もずたずたに切り裂かれて、泣きはらして。
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かわいそう。
すごく、かわいそう。
たすけたい。あなたのちからになりたい。
この、やいばでーーーーー?
* * *
真夜中。静かになった木造の廊下を、ぽてぽてと小さな音を立てて、小さな影が歩いている。歩くたびに長細い尾がゆらゆらと揺れる。
「たく、この家の周りは雑魚妖怪どもの巣窟だな」
どこか疲れたような声をしているのは黒音だ。つい先ほどまでは五十鈴屋の周りを見回っていたのだ。
「あいつが近くにいるかもしれないしな……」
苦虫を百匹潰したような顔をする。思い出すだけでも忌まわしい。
黒音は階段を上がり、裕昌の部屋へ戻る。ふと、開けっ放しにしておいた扉から、風が吹き込んでいることに気が付いた。
「?裕昌?起きてるのか?……っ!」
人の姿になると、扉を開ける。扉を開けた先には寝床がある。その寝床には主が眠って、いるはずだった。しかし、布団は捲られ、寝床はもぬけの殻だ。そして何より、窓が開いている。
「しまった!あの刀……!」
妖気を張り巡らせ、妖刀の妖気を探る。本来あるべきところに、それの気配がなくなっている。黒音は血相を変えて窓から飛び出る。
「くそっ、やけに静かだと思って放置しておいたのが甘かったか……!」
あの刀が人の体を依り代とすれば、向かう先はただ一つ。その怨みの矛先だ。全速力で屋根を飛ぶように移り、走る。
「頼む、間に合え!」
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