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父の証言
結果的に私は アンナを殺した。
間接的に私は アンナを殺した。
アンナが妻を殺したように 愛する妻を殺したように
私があの娘に裁きを下した ただそれだけなのさ。
あいつは悪魔だ
血も涙もない羊を被った狼さ
みんな騙されてる
妻さえ騙された
私も騙された あの時までは
身辺整理で見つけた袋 全てを物語る
あの娘は妻の薬草を毒草にすり替えた
少しずつ 少しずつ 盛っていったのさ
優しいアンナ 面倒見の良いアンナ 健気なアンナ
全て狂言だったのさ。
笑えるだろ?笑ってくれよ。
小娘が親をぶっ殺した。
それも私ではなく 病弱な妻を
人間の形をした何かだよ。
妻に似たブロンドヘアーと青い瞳
妻に似た その姿が 妻を乗っ取っているようで
腹立たしくて 悔しくて
ついに抑えきれなくなったのさ
酒に溺れ アンナを殴り アンナを踏みつけ アンナを罵り
反道徳なのは分かっていた 自分が恐ろしくなった
でも止められなかった
傷つきながら 泣きながら あいつの口角は上がっていた
一体あいつは何なんだ
制御ができなくなったのさ
あの日 マッチの籠を片手にあの娘は言った
「靴がないの。お母様の靴を履いていくわ。」
妻の形見 結婚する時に買った靴 軽々しく履きたいと言ったのさ。
恨み辛みが崩れ去り 思い切り投げつけたら それきりさ。
アンナを殺したのは私だ。
全ての覚悟はできている。
この手紙を読んでくれよ。
全ての真相が書いてある。
2つの便箋託した翌日
彼は獄中で服毒自殺。
寒い寒い 朝のこと。
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