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「僕は男ですよ」
「知ってるよ。もしかして怒ってる?怒った顔も天使!」
屈託のない笑顔に思わずため息をもらしながら目を伏せた。
「僕は天使なんかじゃない……そんなにきれいなものでもないよ」
なにを根拠に僕を天使なんていうのかわからないけど、本当の僕を知れば、きっと彼女もがっかりするはずだ。
僕はなにも持たないつまらない人間だから。
「それに……男らしくなりたいと思っているんだけどな」
「なんで?キミだけは……そのままでいてよ」
「そのままって……君は僕の何を知っているの」
視線を上げて彼女を見据えると、今にも泣きそうな顔で微笑んでいるように見えて心臓がドキリと音を立てた。
「知ってるよ……だってずっとキミを見てきたんだから……」
「君は……誰なの?」
「わたしは……キミのストーカーです」
「っ!?ストーカー!?」
「だからわたしを相手にしちゃいけません。危ないですよ」
ずっと疑問に思っていたけど、やっぱりこの状況的に僕は……からかわれてる?
僕みたいなつまらない人間をからかっても面白くないはずだ。なのになにが目的なんだろう?
頭の中で負の感情と困惑する気持ちがぐるぐると混ざりあってショートしそうになる。
固まったまま何も言えない僕を見つめると、微かに笑みを浮かべた彼女が僕の横を通りすぎていく。
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