✾心を引き付ける甘い誘惑

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「でも……あれはなんだったんだろう」 ひとつため息をつくと、ノートをとる手をとめて机に頬杖をつく。彼女の言葉を思いだしながら窓の外を眺めた。 『ずっとキミを窓越しに見つめることしか出来なかった』だとしたら、僕の席は校庭に面した窓側の席。だから僕を見ることは可能かもしれない。もしかしたら今も僕を見ているかもしれないと思うと、キョロキョロと窓の外を確認してしまう。 彼女と出会った歩道橋が視界に入る。歩道橋だと窓がないから窓越しに見つめることはできない。だから歩道橋ではない。だとしたら僕の教室を見渡せるほど高い建物で、窓がある場所。 学校の周辺にある高い建物は限られてくる。はるか先まで見渡せる学校の周辺を視線でたどると、ひとつの建物が目に飛び込んできて、ハッとした。 「病院?まさか……」 道路を挟んだ学校の真横に建てられた大きな病院に視線が止まる。この辺りで高い建物は病院くらいしかない。もし病院に入院しているのであれば、窓越しに僕の様子を見ることはできる。ひとつの可能性にたどり着いたけど……信じたくない。 「でも……」 ミントグリーンのカーディガン越しに見た彼女の手首を思いだす。透けそうなほど白くて細い手首。信じたくなくてもどうしても頭は正解だと僕に告げてくる。それに歩道橋は病院と学校を駅まで繋いでいる。彼女は病院側にあるエレベーターで歩道橋を降りていった。もう否定できる要素がない。彼女は病院に入院しているとしか考えられない。 だとしたら……確かめるしかない気がした。
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