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「ディオニシス様、お飲みものをお持ちしましょうか?」
「ありがとう、今は良いよ。」
「では、お体をマッサージしましょうか?」
「ありがとう、でも、今は良いから。」
「それでは、ご本でも…」
ラビスはまだ赤い目と鼻のまま、ダニエルが疎ましく感じる程に、彼の世話を焼いていた。
ラビスがどれほど自分の帰還を喜んでくれているかはわかっていたため、ダニエルは苦笑いを浮かべるしかなかった。
「あ、そうだ。僕、ミカエルのお見舞いに行こうと思ってたんだ。」
「お供します!」
「そう……」
再び苦笑いを浮かべたダニエルは、ラビスに伴われて、仕方なくミカエルの部屋へ向かった。
「ミカエル…具合はどう?」
「ダニ…いえ、ディオニシス様…こんなところにおいでいただき、どうもありがとうございます。」
ミカエルは、体を起こそうとして、小さな呻き声を上げた。
「あ、動かないで。まだ無理は出来ないんでしょう?
それに、様なんてつけないでよ。
今まで通りで良いよ。」
「いえ、そんなわけにはいきません…あなた様はリンガーの王子なのですから。」
「そんなこと、本当に気にしないで。
あ、この子はラビスって言ってね。
僕の世話をしてくれてるんだ。」
「ミカエルさん、初めまして。
ディオニシス様にお力を貸して下さって、どうもありがとうございます。」
「いえ、僕は何も…
それどころか、好奇心に負けてこんなご迷惑をおかけしてしまい、申し訳なく思っています。」
ミカエルは、そう言って瞳を伏せた。
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