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(あぁ~……これが正位置だったらなぁ……)
一枚目のカードをめくったダニエルは、心の中の落胆を悟られないよう無理に作った微笑を、小さなテーブルの向こうに座る女性に投げ掛ける。
女性はそれを良い意味に受け取ったのか、嬉しそうな笑みを返し、ダニエルは心苦しさを感じながら、下向きの太陽のカードをテーブルの上にそっと置いた。
ダニエルは、小さな咳払いを一つすると、呼吸を整え、十字の形とその隣に縦一列に並べられた裏向きのカードを次々と表に返していった。
(……勘弁してよ…)
気分が重くなるようなカードの並びに、さすがにダニエルは作り笑いをする気力さえ失っていた。
「ねぇねぇ、どうなの?」
ダニエルの向かい側に座るのは、もう決して若いとはいえない一人の女性。
容姿もお世辞にも美しいとは言えない。
ダニエルには、なんとなく羽をむしられた鶏に似ているように思えた。
(これほど悪いカードが並ぶのも珍しいな。
相談内容は恋愛についてってことだったけど…相手を現すカードがこれだと相手は若い男ってことになるか…
なるほど。だから、こんなに障害が出てるのか。
相手は欠片程もこの女性に好意は持っていない。
それどころか、女性から金を巻き上げるのが目的だろう…
しかも、最後のカードがこれじゃあな…)
高い搭に激しい稲妻を伴なって雷が落ち、搭を破壊する光景の描かれたカードをダニエルはみつめた。
(この中から何を救いとして伝えるかだよなぁ…)
ダニエルは、今一度、テーブルに並んだカードをみつめ直した。
「ねぇねぇ、もったいぶらないで早く教えてよ!
私とエドワードはこの先どうなるの?
なんでも正直にはっきり教えて!」
「……本当に、はっきり言って良いんですか?」
「ええ、もちろんよ!
良いことも良くないこともなんでもはっきり言ってちょうだい。」
女性は、晴れやかな笑顔で頷いた。
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