占い師ダニエル

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「では……」 ダニエルは、カードに現れた結果を恐る恐る女性に話し始めた。 最初はそれを静かに聞いていた女性だったが、聞いているうちにだんだんと目に落ちつきがなくなり、眉間には深い皺が刻まれ、テーブルの下の足が小刻みに震え出していた。 「……と、いうことですから、彼に執着するのはもうやめて、出来るだけ早く身を引かれた方が……」 ダニエルがそう言った次の瞬間、狭い部屋の中に乾いた音が響いた。 「い、いってー……」 打たれた頬に片手を添えて顔をしかめるダニエルの前で、仁王立ちした女性は顔を真っ赤にして身体を震わせていた。 「酷いじゃないですか、なにも打たなくても…」 「酷いのはそっちの方よ!! 私のこともエドワードのことを何も知らないくせに、勝手なことばかり言って…!! あんたに何がわかるって言うのよ! 何よ、こんなカード!」 女性の奥まった瞳から涙が一粒こぼれ出し、それと同時に女性はソプラノ歌手のような甲高い悲鳴をあげてテーブルの上のカードを乱暴に払い除けた。 興奮した女性の感情はそれだけではおさまらず、テーブルや椅子をひっくり返し、そこらにあった花瓶や置き物をダニエルに向かって投げつける。 ダニエルは、まだ今の状況がよく理解出来ていないような表情で、投げ付けられるものから身を守ることに懸命になっていた。 やがて、騒ぎを聞きつけた店の者が駆け付け、女性をなだめながらどうにか外へ連れ出した。 (……そういえば、月のカードが出てたな… やっぱり、あんなにはっきり言うべきじゃなかった。 あぁぁ、失敗した……) 散乱した部屋の中で、ダニエルは、ゆっくりと床に散らばったカードを拾い集めた。
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