~火曜日~

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~火曜日~

「ちょっとお兄さん、ここで昨日あたしにぶつかったでしょ」  昨夜と同じく0時前、会社からの帰りに向かったいつものコンビニの前で、俺は話しかけられていた。いわゆるスカジャンに細身のデニム、スニーカーというラフな格好で、深めにかぶったキャップの下から幼さの残る少しつり目の顔がのぞいている。外見からしておそらく、昨夜と同じ子。  実はいるのは見えていたが、家出少女か何かだと面倒なので、無視しようと思っていたのだが。 「え…ああ、そうかもな」 「だったらさ、お詫びに何か買ってきてよ」  はあ?なんだそりゃ。心の声が喉まで出かかってこらえたが、俺の口は間抜けのようにあいていたと思う。少女はいたずらっぽい笑みとともに立ち上がると、 「そうだなあ。とりあえず喉が渇いたから牛乳がいいかな」  とオーダーしてきた。ほぼ初対面の人間にずけずけとたかるのも、チョイスが牛乳なのもわけが分からない。しかし俺の疲れた頭は、少女の無邪気で強引な依頼を断るよりも大人しく受け入れることを選んでいた。 「ああ、そう。分かったよ」  そう言って店に入ってすぐ、俺はひどく後悔した。何してんだ俺は。あんなよく分からない奴、無視して弁当買って、さっさと帰れよ俺。  しかし分かったと言ってしまった手前手ぶらで戻るわけにもいかず、結局弁当と缶ビールと、少し迷って500ml紙パックの牛乳を買う。店を出て左を向くと、少女は同じところに座って待っていた。
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