~水曜日~

2/3

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
「お寿司だっ。いただきまーす」  そう言ってハナは手渡したパックを開けると、素手でマグロを掴んで口の中に放り込む。しまりのない顔で、んまーい、という声が聞こえたところで隣に座った俺は話しかける。 「お前はさ、なんで俺なんかに、そんな興味があるわけ」 「あたしの名前は、ハナだよ」 「ん…ハナはなんで、そんなに俺に興味持ってるの」 「うーん、なんでって言われてもなあ。あまりにも疲れた顔したお兄さん見かけて、心配になっちゃった、みたいな?」  そんなさわやかな笑顔で、みたいな?って言われても。 「トオルは、自分の人生、楽しく生きてる?」 続いてアジもまた素手で掴んで口に放り込んでから、ハナは聞く。 「…なんだよ急に」 「何だか毎日帰るの遅くて疲れてるみたいだし、幸せなのかなって」 「社会人なんて、こんなもんだろ。大抵の大人が色んなことを我慢して、生きるために働いてる。俺だけじゃないんだよ」  質問の答えになっていないことも、ハナに話しながら自分に言い聞かせていることも、分かっている。そんなこと、この子に悟られることはないだろうけど。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加