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「お寿司だっ。いただきまーす」
そう言ってハナは手渡したパックを開けると、素手でマグロを掴んで口の中に放り込む。しまりのない顔で、んまーい、という声が聞こえたところで隣に座った俺は話しかける。
「お前はさ、なんで俺なんかに、そんな興味があるわけ」
「あたしの名前は、ハナだよ」
「ん…ハナはなんで、そんなに俺に興味持ってるの」
「うーん、なんでって言われてもなあ。あまりにも疲れた顔したお兄さん見かけて、心配になっちゃった、みたいな?」
そんなさわやかな笑顔で、みたいな?って言われても。
「トオルは、自分の人生、楽しく生きてる?」
続いてアジもまた素手で掴んで口に放り込んでから、ハナは聞く。
「…なんだよ急に」
「何だか毎日帰るの遅くて疲れてるみたいだし、幸せなのかなって」
「社会人なんて、こんなもんだろ。大抵の大人が色んなことを我慢して、生きるために働いてる。俺だけじゃないんだよ」
質問の答えになっていないことも、ハナに話しながら自分に言い聞かせていることも、分かっている。そんなこと、この子に悟られることはないだろうけど。
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