年下の恋人は可愛い部下 《課長視点》

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年下の恋人は可愛い部下 《課長視点》

 夜の駅で、やけに気になる男がいた。今にも線路に飛び込みそうな雰囲気なのだ。その男を見かけるのは、その日で三度目だった。さすがに放っておけなくて、自販機で温かいお茶を買って、その男に声を掛けた。それが、あきと俺との馴れ初め。  別に、優しい男じゃないよ。俺は。あきには優しくするけれど、他人にそこまで興味はない。あきは、俺の可愛い部下で、恋人だから、ついつい甘やかしたくなる。   「課長、眉間に皺が寄っていますよ。真田君がいないと表情が険しくなるんだから、気を付けて下さいね」  佐々木さんに見咎められて、悪い悪いと苦笑を返した。 「真田君、風邪、早く良くなるといいですね」  コーヒーを受け取りながら、俺は頷いた。  業務後、俺はスーパーに寄って桃の缶詰やプリンやゼリーやヨーグルトなんかを籠にぽいぽいと放り込む。そして、レジを済ますと、車であきのマンションへと向かった。    合鍵で扉を開けて、部屋へと入った。あきの部屋は相変わらず綺麗に整頓されている。あきはベッドにはいなかった。水音が聞こえてくる。 「あき、風邪ひいているのにシャワーなんか浴びて大丈夫か? 」  浴室にいるあきに声を掛けた。水音が止んで、ガラリとガラス扉が開けられる。 「幸也さん、来てくれたんだ。ありがとうございます」  ふにゃりと笑うあきはもちろん裸で、肌がほんのりと上気していて、とても色っぽい。俺はごくりと唾をのみ込んだ。 「汗かいたから、流していたんです。もう熱も下がりましたよ」  大きなバスタオルで体を拭きながら、くすくす笑うあき。  年下の可愛い恋人は、無自覚で俺を誘惑するから困ってしまう。病み上がりのあきを襲わないように平静を装いながら、俺はそんなことを思っていた。 「あ、プリン、幸也さんありがとうございます」  テーブルの上の袋の中を嬉しそうに覗き込んで、すぐに笑顔で礼を言うあき。素直で可愛い俺の恋人。  あきに出会えて良かった。あの日、声を掛けて、本当に良かった。俺がそう思っていることをあきは分かっているだろうか?   俺はずっと、あきの前では優しい上司兼恋人でいるよ。  あきが俺から離れていかない限りは、ね。
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