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カレーにはこだわりがある
トントントンと玉ねぎの汁で泣きそうになる目を度々抑えながら、玉ねぎ、にんじん、じゃがいもを切る。
にんにくチューブと生姜チューブが入った鍋に玉ねぎを投入し、強火でしばらく焦げ目を作る。これによって飴色に炒めるときと同じ効果があるそうだ。
玉ねぎがいい感じになってきたら火を止め、別の鍋ににんじん、水に晒したじゃがいもを入れて炒める。
ある程度焦げ目がついたら、手で千切った牛肉(少し高めで美味しい)と炒めた玉ねぎを入れて、肉の色が変わるまで炒める。
水を多めに1リットルほど入れ、20分ほど煮る。
アクを取り、赤味噌を溶かす。カレーのルウ(粉末)を入れ、更に溶かす。
ルウが完全に溶けたら、高カカオチョコレート、醤油、オイスターソース、はちみつ、粉末コーヒーを溶かす。
そして1時間半ほど煮込む。
特製カレーの出来上がりだ。ご飯も炊いてあるし、今は8時だから丁度いい。
早速食卓について食べよう。と思っていたら、同室者が起きてきたみたいだ。ニャンニャンしたときは疲れて寝ていることが多いのに。
ほんの少しフリーズして、
「カレー作ったけどいる?」
と聞いてみる。寝ぼけ眼でこくりと頷かれた。
それにしてもこの同室者は可愛らしい。色素の薄い髪はふわふわで大きな目はくりくりしている。普通に街ですれ違ったら女の子と勘違いしていただろう。
でも、いくら見た目は女の子みたいとはいえ、同室者こと若松充希は飯はなかなか食べるので多めにカレーをよそう。
自分の分もよそい、グラスを2つ取ってきて麦茶を注ぐ。福神漬けも用意する。(俺にはらっきょうは早い)スプーンを取ってきて素早く食卓につく。
「「いただきます」」
きちんと挨拶して、流し込まないように小さいスプーンでしっかり咀嚼しながら食べる。たまに福神漬けも一緒に。
一方若松は、小さい子供のように大きなスプーンでがっついている。カレーは飲み物ではない。
「美味しいか?」
と一応聞いておく。
「ん」
短い返事だが美味しいならいいだろう。
なんだか小学生の息子を持つ父親のような心境になってしまった。
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