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呆気にとられていると、都筑さんと目が合った。
彼は当初ここを通り過ぎようとしていたように見えたけど、「有村」と私の名前を呼んだ。
「はい」
「時間あるか。相談がある」
「もちろん大丈夫です。でも、桃木さんは……」
「桃木は戻って雑用でもしててくれ。しばらく有村を借りる」
「えぇ、なんでですかぁ」
都筑さんは私の肩を抱き、桃木さんにはシッシッと追い出すようなジェスチャーでオフィスに戻るように強要した。
私を選んでくれたように錯覚して、抱かれた肩がピリピリと痺れる。
やがて桃木さんは心底不服そうにしながらもここを出て、オフィスに戻って行った。
こんなこと思ったらいけないけど、なんだろう、この気持ち。優越感かな。
私ったら本当に性格が悪い……。
でも最初に喧嘩を売ってきたのは向こうだから、こんな気分になってもいいよね。
「有村、大丈夫?」
「は、はい」
耳元でそう聞かれたかと思うと、都筑さんは肩に置いた手を滑らせて、私を背後から抱き締めてきた。
相談は、と思ったが、本当の用事はこれかと気付くと私の体は芯から熱くなる。
「……昨日電話出なかったろ。なんでいつも返事くれないんだ」
責められているのに、うなじにキスをされている。
うわ、なんか、これダメだ。すごく甘ったるい。腰砕けになりそう。
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