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8・尾形サイド
「あーー! しっかし惜しかったよなあ! 最後のゴール決まってればなあ!」
どん、とグラスをテーブルにおいて、杉下が何度目かの「惜しかった」を呟いた。もうべろべろに酔っ払っている。
あのあと、先輩が逃げるように帰って行って、仕方ないので三人でご飯食べに行って、杉下と二人で二次会と称して今に至る。
ホントは先輩と行きたい店とかあったんだけど……ちょっとお洒落なレストランで食事して……夜景の綺麗なとこ連れてって……そんで、先輩が笑ってくれたら最高だったんだけど。
先輩、ちょっと様子が変だったな。最後、オレの目見てくんなかったし。何かまずかったのかな……なんか先輩にとってヤなことしちゃったのかな。
「おいこら、聞いてんのか尾形~」
「うんうん、聞いてる聞いてる」
杉下とは大学まで一緒にバスケをした仲だ。オレもプロに誘われたけど……正直、やっていける自信はなかった。夢を追いつづける杉下はすごいと思う。
「しかし、すごい偶然だよな~。あの久坂先輩と同じ会社にいるなんて。お前、現役の頃ずっと言ってたもんなあ。久坂先輩だったらこうするとか、先輩はそうしないとか」
「うん……オレもそう思う」
バスケをする上で、いや、人生のすべてにおいて、オレの中では先輩が指針だった。今だってそうだ。
「先輩、全然変わってなかったあ。すぐ分かったぜ。高校の頃から綺麗だったけど……」
「は?」
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