2・尾形サイド

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2・尾形サイド

 来るなと思っていても容赦なく朝は来るし、会社にも行かねばならない。そこが学生と違うとこだなとしみじみ思う。 「……サボりてえ……」  歯磨きをしながら、鏡に映る自分の顔を見る。……ヒドイ顔だ。  昨日はほとんど眠れなかった。先輩の泣き顔がずっとちらついて、うとうとすると夢に出て来て……。 『行かないで……和彦さん』  和彦さんてやっぱりアレだよな沢村(さわむら)係長のことだよな。あ、本社に行ったら課長だっけ。  昨日はその沢村さんの壮行会で、したたかに酔っ払った先輩を家まで送って、ベッドに寝かそうとしたら壁に先輩の頭ぶつけちまって、むっくり起きたからヤバいと思ったら、オレのシャツの裾を握って……。     いや、もう怒鳴られた方がよかったよマジで。あんな先輩……初めてで。……戸惑う。  自分の手をじっと見る。  オレの前なのに、涙をぽろぽろ零す先輩を見て、普段厳しいだけにびっくりして、新鮮で……思わず腕に引き寄せて、溢れる涙をそっと拭った。 『久坂先輩……』  しばらくオレの腕の中で泣いていたが、やがて眠ってしまったので、またベッドに横にしようとして、足がもつれてあんな体勢になったけど。  ……ただ、それだけだ。別にそれ以上でもそれ以下でもない。  オレの腕にすっぽりハマってて、あの頃より筋肉落ちてるけどそこがいいとか、涙に濡れた睫毛がけっこう長くてドキッとしたとか、ぶっちゃけ先輩のこと可愛く見えてきて、あのままだとキスしてたかもなんて……きっと酒のせいだな、うん。    つけっぱなしのテレビが7時半を告げた。 「お、やべ」  オレは慌ててうがいを始めた。
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