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11・久坂サイド
「出張ですか?」
「うん……そうなんだ。大規模な展示会だろ? 人手もサンプルも不足してるそうなんだ。急で悪いが、お前ら、行って来てくれんか」
出社早々、課長に尾形と二人で呼び出されたと思ったら、そんなことか。俺は手帳を開いて
「そうですね……特に急ぎの予定もないし、大丈夫です」
な、と横に立ってる尾形を見上げる。
「はい。自分も大丈夫です」
尾形にとっては初めての展示会だ。ちょうどいい経験になるかもしれない。
営業一課主催だから、先に西崎が現地にいるはずだ。電話して必要なもの聞いてみるか……。
さっそく西崎に確認して、持っていく資料やサンプルの準備をしていると、ホテルの予約を進めてくれていた望さんが慌てたように、
「久坂くん、大変。ホテルが全然空いてない」
「えっ」
「なんだか学会とコンサートが明日重なってるみたいで……あちこちかけてみたんだけど、やっと見つかったのがツイン一室だけなのよね。どうしよう」
そう言って俺と尾形の顔を見比べる。
いつまでも望さんの手を煩わせるわけにもいかない。
「俺は別に問題ないですよ。すみません、お手数かけて」
そう望さんに笑いかけてから尾形を見上げる。
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