第1章 当たり前の幸せ

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第1章 当たり前の幸せ

 ゴールデンウィークが終わると、オレは毎年憂鬱になる。何故って?働かなくてもいい日がこんなに続いたら、永久に働かなくてもいいんじゃないですか?と体調がオレ自身に問いかけてくるような気がするから。  でも、今年は少し違っていた。今年、オレにはがいる。 「慎太郎、昨夜ちゃんと早起きするって約束したじゃないか?いい加減起きないと、駅までダッシュになるからなっ!!」  気のせいか、オレの頭の上から声がする。聞き慣れた、心地よい声だけど、その声の主はちょっと焦ってるようだった。 「……なんで……なんで優がここにいるの?」 「はァ?慎太郎、昨日オレの家に泊まったこと、忘れてない?一人だと絶対遅刻するからって、オレの部屋に泊まって一緒に出勤しようって言ってただろう?」  そうだった!!ここはオレの家じゃない。優の家だ。カバンは?スーツは? 一式持って来たっけ?ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ!! 「ほーら、やっぱり焦ってる。そう思ってさっき、慎太郎の家から合い鍵で慎太郎のカバンとスーツ、取ってきてあげたから」  優はオレのことをオレ以上によく熟知しているらしい。もっとも、元上司の笹本課長に言わせれば、オレの行動パターンは単純だからすぐに次の行動を把握することが出来る、と言っていた。…ホント、失礼なオッサン…いや、元上司。
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