運命

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私と家族は、保健所に来ていた。 「どうぞ、好きな子を選んでください。」 押し込められている動物たちをぐるりと見回す。 体の大きさにあわない檻の中でぐったりしている犬。 「どうするの?マオ。今日はやめとく?」 私たちがこの保健所に来た理由は、溺愛していた子犬のジロが死んでしまったからだ。 それも、ソファーのしたに挟まり窒息死。 ジロの冷たい体が、心の奥まで染み込んでいくようだった。 マオは三日三晩部屋から出てこなく、もはや泣く気力もない。 そんなマオを見かねて家族は 「保健所に行こう。」 と誘った。 しかしマオは ─ジロは諦めて、代わりの犬にしろって言いたいの?ジロの代わりなんて、いらない。 だが、家族のしつこいほどの誘いに呆れ、保健所に来たのだった。 「うん、今日はもういい。帰る。」 檻に背を向け、歩き出す。 保健所の人は母に何か耳打ちしていた。 すると─ 「きゃん!」 真っ黒なもふもふの塊が駆け寄ってきた。 「わふ、わふ!くぅぅん...わん!」 マオのズボンを爪でカリカリしている。 思わず抱き上げ、クリクリの目を見つめた。 「ねぇ?マオ。こんなことは言いたくないけれど...ジロの意思をこの子に受け継いでもらいましょうよ。」 だが、この子犬はジロと真反対の容姿だった。 真っ白だったジロに対し、この子は真っ黒。 「あのね、ジロの代わりはいらないの。」 そのとき、もう一匹の犬も駆け寄ってきた。 その犬は真っ白な毛。つぶらな瞳。 ジロにそっくりだった。 「ジロ...!」 「白い子と黒い子は兄弟なんですよ。」 「どっちにするの?選びなさい。 別に、他の子でもいいけれど。」 すっかり機嫌が悪くなった母はそう吐き捨てた。 ─なんで選ばなきゃいけないの。 私の選択で、この子達の人生が決まる。 そう...ジロのように可哀想な死に方をするかもしれない。 「選べないよ!無理に飼わなくてもいいでしょ!?もう放っておいてよ!」 バタン!! 子犬達を置いて家へ帰る道を走った。 風が心に吹き付ける。 ─ジロのお墓に行こうかな... 「わん!」 チャッチャッチャ... 走ってくる音が聞こえるほうを向くと、 あの黒い子犬だった。 「...なに?私はあなたに用はないよ。 あなたにジロの代わりは求めたくない。 ─帰りな。」 プップー 車のクラクションがなり、窓が開いた。 「マオ!その子と車に乗りなさい!」
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