それ以上でも、以下でもない

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※ みつこは小学生になっても、中学生になってもマイペースに生きる子だった。相変わらずほとんど喋らないけれど、喋れない訳ではない。俺は学校では必要以上に関わりを持たず、またみつこも俺に絡んでくる事はなかった。同じマンションに住んでいたからたまに顔を合わせるくらい、声を掛けてもほとんど反応はないけど挨拶程度はするようにしていた。 中学に入学してから一ヶ月が経とうとした頃。みつこの母親からそれとなく聞いてみてと頼まれたので、話を振った事があった。 「みつこ、お前さ。学校大丈夫か?仲良い友達とか出来たか?」 「…」 「いや、大丈夫なら別に良いんだけどさ」 「…委員会、やってる」 ガラス細工のように繊細な音。久々に聞いたみつこの声の、返答の意外性に声を上げた。委員会。それは決して強制ではやらされない。あくまで立候補が基本のもの、希望者がいなければ担任が指名する事もあったが、二組の担任は優しそうな年配の女性だった。わざわざ大人しいみつこにやらせるような人には見えない。 「…そっか!それなら大丈夫だな。俺は部活優先したかったから何もやってないけどさ。みつこは何委員なんだ?」 しかしこれにみつこは答えず、重たそうなカバンを抱えるようにしてエレベーターに乗り込んでしまった。 相変わらず何を考えているかは分からないけれど、みつこも変わっていくんだ。そう思うと何故か胸の辺りがそわそわして、俺はその日暗くなるまでリフティングの練習をし続けた。
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