Forward, Again

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Forward, Again

 その子のことはここではRと呼んでおく。Rは今年うちの職場(田舎の製造業)に入社した新人の一人で、この春高校を卒業したばかり。第一印象は小柄・金髪・ロングヘアーで、ギャルとまでは言わないが化粧が濃い。ちなみに弊社の容姿規定は、爪と髪を短く切れ(もしくは束ねろ)という以外はとても緩い。金髪なんて校則に縛られていた新卒にはよくあることだ。だいたいの社員はそのうち勝手に落ち着いていく。  俺?俺は43歳独身貴族だが、まあそれはどうでもいい。俺とRとの関係は新人研修担当者と被研修者。同期採用の新人は十名いて、部署も違えば男も女もいるし、高卒も大卒もいる。Rは漢字を書くのに少し難があるくらい(伝票を伝栗と書いたり、在庫を存庫と書いたり)で、特に問題を起こすでもなく、月2回の研修をこなしていった。  そうだ、問題といえば工業高校出身の新人小坊主が、18のくせに堂々と喫煙所で煙草ふかしやがって、俺の仕事をものすごーく増やしてくれたよ。だいたい所長も見つけたその場で注意してくれりゃいいのに、俺に指導しろって言ってきてさ。あいつを採用したのはあんただっての、全く。  ああ、話が逸れてすまん。Rのことで印象的なことといえば、9月の終わりに茶髪になったことくらいだ。秋だもんな、毛色くらい変わるさ。  さて、ここからが本題な。
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