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何かを変えたい。
そういった欲求を持つ人間は多いだろう。
俺の17年の人生ですらそう思うのだ、大人たちはもっと思っているだろう。
「当フェリーは、後10分程で才羽島(さいばじま)へ到着いたします。繰り返します、当フェリーは--------」
本土からフェリーに揺られて20分ほどで、俺の目的地の島が見えてくる。
「……」
出航してすぐ俺は甲板へ出て景色を見るでもなく、ぼーっと手すりにつかまり海を見ていた。
(…ここに来て、何かを変えられるのだろうか)
そんなことばかり考えてしまう。
ーーーーーーーーー
(「君の才能には素晴らしいものがあるが、その状態ではここにはおいておけない。…すまないが、それが学校側の判断だ」)
(「ちゃんと直して戻ってくるんだろ!?なら、なんでそんなもの持ってるんだよ!?」)
ーーーーーーーーー
「……」
やめだ、今は思い返すのをやめよう。
(せっかくの心機一転、新しい場所でやり直せるんだ)
過去は忘れて、とにかく俺は生まれ変わったと思うんだ。
そう自分に思い込ませるように、ぎゅっと目をつむり悪い考えを振り払おうと頭を振る。
その様子をおかしく思ったのか、1人のおじいさんが話しかけてきた。
「ぼうず、何をやっているんだ。そんなところで頭を振り回して」
色黒で体格の良い、まさに『海の男』という感じのおじいさんだ。
見た感じ60代ぐらいのように思うが、俺よりはるかに体格が良いので実際はもっと年配ということも考えられる。
「あ、いえ……何でもないです。…ちょっと悩んでいて」
苦笑しつつ返事をする。言ったところで、という考えが頭にあったからだ。
しかしおじいさんは
「何が何でもないだ、悩んでいるんじゃないか。わしに言ってみ」
「あ…いえ、お構いなく…」
こういう人って苦手だ。
言っても「どうせそんなこと」と一喝してくるのだ。
だいたい、じーさんに今の若い人間の価値観が分かるわけない。
俺だけじゃなく、今の若い人たちは同じように思っている、そう思い、じーさんには構ってほしくないのでそっぽを向いた。
「……」
すると、じーさんは何も言わず俺肩と腰を触る。
「ちょ、何ですか…!?」
離れようとするが、じーさんに右腕を強い力で捕まれる。
は、離れられない。
「お前……。手首をけがしているな」
「え……あ、まあそう、ですけど…」
じーさんの鋭い眼光の先には、俺を右手首。
そうだ。俺は右手首を損傷している。
「…いや、正しくは『していた』、か」
「……」
「お前、もう治っているだろうに、なぜけがをしている風に振る舞う?」
(まだ…治っていない…)
そう、まだ治っていないんだ、でなければ、いまだに腕に力が戻らない説明ができない。
「そうか…」
じーさんは何かに気づいた。
俺を憐れむような眼で見ているようにも、何かそれ以上のものを見ているようにも見える。
「ぼうず、わしは清水という。お前の目的の島で医者をやっている。…気が向いたら来い」
そう言うと、じーさん…清水さんは少し日焼けし角の折れた名刺を俺に渡し、船内へ戻った。
(清水…)
じーさん、俺のけがを見抜いていたな。
気が向いたら行こう、そう思った。
-ピンポンパンポーン-
『間もなく、才羽島へ到着いたします。繰り返します、間もなく--------』
(行こう…)
俺も船内へ戻った。
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