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「さてと…」
何となく昨日、藍がいた橋の下の河川敷に来ていた。
今日もボールを投げている音がする。
「…うーむこれは」
今日の藍は制服だ。
あいにく昨日と同じように、際どい丈のスカートで藍が練習している。
そしてこれまた幸いにも藍はこちらに気づいていない。
「……」
さてと、どうする藤田光一。
①ここは紳士的にパンツが見えそうだということを伝える。
②そんな事は知らねえ。己の気配を消す力を信じパンツを見る。
③開き直り、なんならめくる。
「いやいや…」
③は無いだろ、社会的に死ぬ。
ここで一つ、俺の出した選択肢ではあるが③は無しにしよう。
……やりたくはあったけども。
(パンツを見ないという選択肢はないのか…)
心の中の俺の天使と悪魔に問いかける。
すると、天使のくせに「いかにも悪そうな天使」と「普通に悪そうな悪魔」が出てきた。
「のぞくしかねーだろ、なあ光一よぉ」
「ああそうだ…何なら自分のものにしちまいてぇよなぁ…?」
天使と悪魔が交互にしゃべったはずだが、どっちがどっちか分からない。
天使仕事しろ!
…まあ、俺も一応共学の高校だが、元が男子校というのもあり、女子がいないということもないがほぼ女子と触れ合うことはなかった。
(ほぼというか、ゼロだけどな)
クラスにはもちろんいなかったし、部活でも女子マネージャーはいなかった。
代わりに屈強な男マネージャーには恵まれていた。
そういうこともあり、女性経験はほぼゼロ。
中学でも、思春期を迎えたころにはもう部活でいっぱいいっぱいだったからな。
本当に女性経験などはなかったが…やはり俺も男のようだ。
「……」
とっさに藍の背後にある草むらに隠れる。
草むらに隠れないと、微妙に見えないのだ。
「はっ…」
いかんいかん。こんなことして良いのだろうか…。
しかし…チャンスは今しかない。
これを逃したら…もう二度と巡り合えない可能性も高い。
この島では、いわゆる青少年の欲望を満たしてくれる本は恐らく売っていないだろう。
だってこんな小さな島だもん。
本土までいかないとたぶん無いもの。
そう思うと、余計に今のチャンスを逃せなくなってきた。
いや、もうこれしかない…!
そう自分に言い聞かせる。
すると
「ふっふっふ。 もうちょっと屈まないと見えないよー」
悪魔だか天使だか分らんが的確なアドバイスをしてくる。
藍は今日は制服だ。
今どきの女子高生にしては少し丈が長いように見えるが、でもまだまだ短い(?)
ーーヒュピッ…!--
ノーワインドアップの投球フォームからボールを投げた瞬間、奇跡の風も相まって良い感じに…。
「…ふっふっふ、白だね」
天使(?)が舞い降りた…。
そう…この大きな青空に、一点ある白い雲のように…。
そう思いながら、俺の頭の中でハレルヤがこだましていた。
おっと、いかんいかん。
それもこれも、天使だか悪魔だか分らんが、的確なアドバイスを頂いたおかげだ。
「君…ありがとう」
良い声でお礼を言う。
紳士的な感じで、しっかり感謝の念を忘れない。
同志に対しても、しっかり感謝を伝える。
これも紳士として常識…
「うわぁぁぁぁぁああああ!!」
天使じゃない…
もちろん悪魔でもないが、こいつは…
「やっほー、凪さんだよー」
凪だ。
こいつ……イタズラ好きとは聞いていたが、まるで気配がなかった。
「お前、こんなところで何しているんだ」
「何ってー、なーんか面白そうなことしてたじゃん♡」
「…な、何のことかね」
「ふっふっふ。 それはねー君ぃ、純粋無垢な女の子のパンツを覗き見ようとしていたからねー」
バレてる。
まあ、よくよく考えてみると怪しい動きしかしていなかったのだろうな…。
改めて第3者目線で自分の行動を振り返ってみる。
うーん、きもいな。
「でもま、純粋な男の子として、藍ぐらいの可愛い女の子のパンツだったら見たいもんねー。 アタシが男だったらもちろん見たいし、女でも見たいもん。 気持ちはわからんでもないよねー」
「お、お前…黙ってってくれるのか」
「ふっふっふ。ポ〇モンカード1パックで手を打つよ」
「……」
‐‐ガシッ‐‐
固い握手を交わす。
今、凪と心が通じた瞬間だった。
「……なーにやってんのよ」
びくっとしたが、平静を装いつつ振り返る。
なんたって、俺はまた1つ階段を上ったのだ。
何も恐れることなんてない。
「いえいえ、紳士ですから」
紳士的に対応する。
「…はあ?……もう、凪も一緒になって何やってんのよ」
「ふっふっふ。これが紳士というやつだよー」
ニヤニヤしながら凪も答える。
そうだ、俺は紳士。
常に感謝の念を忘れない。
「…?何やってるか訳分かんないんだけどー…」
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