夏色リフレクション

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ブロォォォォォォッ! 良平の原付の後ろに乗り、風を切るように走る。 (良い子はマネしちゃだめだよ) 夜風もあり、とても気持ちよく感じた。 「気持ちいいだろ?」 こいつが言うとなんか気持ち悪い。 「お前、その言い方きもい。」 「きもくねーよ!変な想像するなよ気持ち悪いな」 「お前がな。…もしかして、こっち系か?」 「ちげーって!」 男たちのきもくないトーク(?)が繰り広げられる。 …まあ、二人乗りしているわけで、おのずとこいつの背中に捕まるわけで…。 こいつ、細身だけどよく見ると、けっこう良い体しているな…。 はっ! いかんいかん。本当に気持ち悪い感じになってしまった。 「…なんか、マジで背筋がぞっとするんだが…」 良平にも感じ取られてしまったようだ。 変な想像はやめよう。 「てか、改めてだが…よろしくな。お前なら、もしかしたら何か変えられそうな気がするんだよな」 「何かって、いったいなんだ?」 「…んー、まあ、気楽にやってくれ」 何だ?何が言いたいのかわからん。 短時間だが、良平という人物に触れた感じ、ひょうひょうとしているイメージだ。 突飛なことを言っているのだろうと解釈した。 キィィッ! 交差点を過ぎたところで停止した。 「わりーけど、ここでいいか?たぶんここからならお前の家すぐだろ?俺こっちだからさ」 まだ来て間もないが、確かここから5分ほどが俺の新しい家だ。 もう少しだが、さすがにそこまで送らせるのも申し訳ないので、ここで降りる。 「ああ、すまんな良平」 「良いってことよ!これからよろしく頼むぜ、光一」 そう言うと、良平はニカッと笑う。 色黒の首から十字架のネックレスをつけていて、少し「イタイ」やつには見えるが、さわやかそうな感じだ。 良平を見送り、家にたどり着く。 ばーちゃんは寝てしまっているらしく家に明かりはついていない。 だが、玄関は空いていた。 (…田舎って、戸締りって文化はないのか…) そう思い、一応俺は鍵をかけ、靴を脱いでいるとそばに置手紙があった。 『おかえり。良平の部屋は玄関のとなりの部屋。荷物は明日自分で片づけるように』 ばーちゃんからだった。 さっそく俺の部屋とやらへ向かった。 そこは洋室をリフォームしたらしく、新しくきれいな部屋だった。 部屋の真ん中には布団が敷かれ、すぐに風呂にはいれるようにバスタオルなども用意されていた。 「……」 ばーちゃんに気を使わせてしまっているな、と思い、明日からはちゃんとしようと思い風呂へ入った。 9年前の記憶だが、風呂の場所は何となく分かった。 部屋へ戻るとすでに日付は変わってしまっていた。 (今日は……もう寝よう) とにかく今日は疲れた。 いろいろと今日一日だけでたくさんの新しい≪世界≫に触れた。 布団に入り、電気を消す。 電気はひもで引っ張る式の、いかにも田舎というものだ。 (…明日からはどうしようか) とりあえず荷解きをして、そのあとは……ー-。 何も考えていない。考えていないけど、夏休みはまだ始まったばかりだ。 『無限にある』ように感じる。 そうだ。まだ夏休みはたくさんある。 少しずつ、ほんとうに少しずつでいい。やりたいことを見つければいい。 そう思い、俺は目を閉じた。 世界は暗転する。
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