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我が女学院の象徴である黄梅の花。毎年、敷地内で美しく咲き誇り、私たちの目を楽しませてくれている。
彼女とは、2年前──この黄梅が満開の頃に出会い、友人となった。
姿形も所作も優美な彼女は、黄梅から出でた妖精のようだった。そう感じたのは、私だけではなかったらしい。入学して間もなく、彼女は『黄梅の君』と呼ばれるようになった。
いわゆる〝おひいさま〟である彼女はとても穏やかな方で、いつもしとやかに微笑んでいらした。
この2年間、出自に関係なく彼女と友人になれたことが、ただ嬉しく、心弾む毎日だった。
今年も黄梅は美しく咲いている。心浮き立つ季節のはずなのに……私は、あふれる涙を抑えられない。
「黄梅の君……本当に、行かれるのですか?」
「えぇ。あの方が渡欧なさる時には、妻として共に……という、お約束ですから」
「学院の過去最高点で、進級なさったばかりだというのに……」
「わたくしは、あの方をお支えするために、生まれてまいりましたから」
「……欧州なんて、遠すぎます……」
「どうぞ、お泣きにならないで。あなたのような優しい方と、お友だちになれたこと。この学院で、一番の宝物となりましたのよ」
ぽろぽろと涙をこぼす私の頬に、彼女があててくださったのは、ほのかに優しい香りがする絹のハンカチだった。
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