変わらぬ愛

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 何を言っても無駄なこの状況で、一体何から言えばいいのかと考えあぐね、私はため息をついた。その瞬間、ルーシェはすかさず涙をこぼし始めた。 「申し訳ございません。言葉も出ないほど、怒らせてしまったとは……」 「いいえ私は……」 「泣くなルーシェ。そなたは何も悪くない」  陛下はルーシェの涙を拭った。  ルーシェの発言に反論しようとした私の言葉に重ねるように、彼女への慰めの言葉を添えて。  今日は私の誕生日。  自分が主役のパーティは中々照れくさいものだが、それでも皇后という地位があるから、毎年盛大に祝われる。  そして、皇后の誕生日パーティと言うからには、少なからず決まりがある。  最低何人来賓を集めるとか、振舞う料理には皇后の好物を出すとか、パーティで最初に踊るファーストダンスは陛下と皇后が行うとか。    そんなこと、と言ってしまえばそれまでだが、それでも決まりは守るべきだ。  まさかファーストダンスを側室と踊るだなんて、あってはならない。  これでは皇后としての私の立場がないではないか。 「陛下、どこまでルーシェに甘いのですか」 「甘いだと?そなたが厳しすぎるのだ。ルーシェは私と踊っただけであろう。それでなぜ平手打ちを受けねばならない」  陛下には“踊っただけ”なのか。  私の誕生日に、皇后が相手であるべきのファーストダンスを側室に奪われることが、どれだけ場を乱し、どれだけ私に屈辱を与えるか、陛下は分かっていない。  それだけ陛下はルーシェを愛し、周りが見えていないということだ。 「話はそう簡単ではありません。ファーストダンスは陛下と皇后が踊る決まりです。それを側室が踊るなど……身の程をわきまえていない証拠です」  だから、平手打ちはその罰。  確かに皆の前で行う事ではなかったかもしれない。  私だって、出来ればここで罰を与えたくはなかった。  でもずる賢い彼女は、私を怒らせることに長けている。  ファーストダンスを踊り切った後、ルーシェはその足で私の元へ駆け寄ってきてにっこり笑ってこう言ったのだ。 “皇后様。お次どうぞ”
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