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陛下には最後に手紙を残してきた。
直接別れを言うのは……苦しかったから。
『私は王宮を離れます。皇后としてあるまじき行為をお許しください。
後宮のことは全て書物に記しており、第二、第三王妃に渡しましたのでご安心ください。
皇后の座をどうするかは、陛下に委ねます。
他に相応しい方がいらっしゃるのであれば、私は喜んでその座を譲ります。
昨日陛下にお伺いしたあの花は、私の一番好きな花でした。
最後に一つだけ言わせていただけるなら……
陛下にも、あの花を一番好きでいてほしかった。
他にたくさん好きな花が出来てもいいから。
あの花が一番だって、言ってほしかった。
私は今でも、あの花の花言葉を……覚えています。
どうかお元気で』
―――三か月後、陛下と私の離婚が成立し、皇后の座にはルーシェが就いた。
私は最後に、陛下に花束を贈ることにした。
何の花にするか悩んだけれど、あの花を送ろう。
陛下が真意に気付いてくれることを願って。
紫色のラナンキュラス――――――
【あなたの幸福を願います】
たとえあなたが一緒にいてくれなくても、
たとえあなたが他の人を愛していても、
あなたの幸福を願い続ける。
報われなくても、愛してる。
これが私の、変わらぬ愛です。
完
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