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「あの……大沢先輩」
何度か東雲 桜が話しかけて見るのだが、大和の周りはいつも4~6人いるためなかなか気づいてもらえない。
あきらめてひとつためいきをつくと、桜は1人になった席で可愛らしいクッキーを食べる。
「おいしい、花の味ってしないんだ」
「ああ、それはね僕の力作なんだ」
独り言に応えが返ってきたのと話しかけようとしていた本人が目の前にいるのとで桜はびっくりして咳き込む。
「これ飲んで」
大和が差し出したコップの麦茶を飲んで落ち着くと、それがずっと彼が飲んでいたコップだと気づき慌てる桜。
「えっと飲みかけじゃないからね。安心して」
「あ、はい」なんと返していいか分からずに黙ってクッキーを食べ始める彼女を見て大和は
「使っているのはビオラで可愛い感じが新入生歓迎の宴に相応しいと思って。あとビオラは繊維質もベーターカロチンも多く含まれていて女性陣が気にいる!って話そうとすると皆がスルーするんだよ。」
どこで息継ぎしているのか不思議になるほどの長い話にも、桜は黙って聞いてくれているのに気分をよくした大和はとうとうとうんちくを語る。
「そうそう、それから……」
「ちょっとやまと、いい加減にしなさい。ごめんね~彼うんちくスイッチ入ると長くてさ」と千秋がやってきて大和を引っ張る。
桜は名残惜しそうに彼を見ているが、大和はごめんねとそんな彼女に向かって拝むポーズをしながら千秋の後について前に出て行く。
「ほらそろそろ締めの挨拶しないと」とみどりがそんな彼の横につき
「ええ~部長の仕事では?」と膨れていう大和の顔を見て
「ちょっとかわいいかも」とぽそっとつぶやいた桜の声は周りには聞かれなかったようだ。
「よ、次期部長」
「待ってました、大沢次期部長」
「やまちゃん、ファイトー」
という周りの声に驚きの顔で対応していた大和は意を決したのか
「僭越ながら、千秋部長にかわりましてこの大沢大和から一言ご挨拶をさせていただきます」
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